闘病家族の人に一番伝えたいこと
癌で闘病する家族にとって一番大事なことは何なのか、ふと書かなきゃいけないと思ったので筆をとろうと思う。
癌患者を看病する家族には、尋常じゃないストレスがかかる。
これは体験していない人にはわからないことだと思う。
具体的には以下のようなストレスだ。
・毎日変容していく家族を見続けなければならない苦しみ
・いつ再発するか分からないという、常に張り詰める緊張感
・検査のたびに押し寄せる緊張、検査結果による絶望
・自分の仕事や学業、プライベートなどとの折り合いでの葛藤
・何もかもに集中できないという精神的ないらだち
・変わってあげることができないという苦しみ
・当事者の気持ちを真に分かってあげられないという苦しみ
・いらだつ家族を見る悲しみ
・テーマが重いだけに、あまり他人に吐き出せないという苦しみ
挙げれば枚挙にいとまがないが、私は父の闘病をきっかけとして恋人とも別れた。
もうお分かりかもしれないが、闘病する家族にとって一番重要なこと、それはストレスとどう戦うかだ。
私たち家族は、がん患者のためにということを一番に考えがちだ。
でも、がん患者、特にうちの父が一番気にしていたのは家族の負担になることだった。
うちではこんなことがあった。
ある日もともと更年期障害気味でよく怒鳴っていた母だったが、
それを見かねた父が「そんなに怒るならもう俺は死んだ方がよい」といった。
それに対して当然母は激怒し、その場にあったぬか床のジップロックに包丁を突き刺した。
台所は見事茶色のぬか床が飛び散り、散々な状況になった。
信じられないかもしれないが、現実に起きたことなのだ。
そのほかにも、父は怒鳴る母を見て、よく「怖い」と涙を流していた。(脳腫瘍の進行により感情が出やすくなったようだ)
また、二度目の再発を経てもう命の先がないとわかったとき父が言ったのは、
「人生に悔いはない、ただ最後に家族に迷惑をかけてしまうことだけが気がかりだ」という言葉だった。
私の父は異常な気遣いマンだったので、すべての人に当てはまるとは言わない。
ただ、家族が頑張りすぎて疲弊してしまうこと、これは患者にとってもとても悲しいことなのではなかろうか。
今看病をがんばっている家族の方には、
大変なときは外部の力をかりたり、息抜きをして、どうか自分自身の調子を整えることこそ一番の看病だと言いたい。
言われてもきっとできないだろう、それでもあえて「自分を大事にして」と言いたい。
具体的には、患者と物理的距離を置き、リフレッシュする時間を確保してほしい。
ちょっとくらい看護師さんに任せたって、大丈夫。
自分が楽しんじゃいけないなんて思う必要はない、あなたが楽しければ大事な家族が嬉しくないはずがない。
私が、私の家族が、もっと健康な精神状態で居られたなら、
父を心配させずに、もっと幸せに逝かせてやることができたのではないか。
これだけが、私の、唯一の後悔なのである。